【神戸阪急店店長】英国一人旅 ⑤

朝食を終えホテルのラウンジで過ごしているとジョーとキャサリンが迎えに来てくれました。

「おはよう。ゆっくり休めた?」とキャップを被ったジョー。
「ここの朝食美味しかったでしょ?」と笑顔のキャサリン。

ホテルから車で5分ほど走らせた場所にジョーとキャサリンが営む茶園『Dartmoor Estate Tea』があります。ダートムーア茶園の広さは約1ヘクタール。約10000本の茶の樹が植えられています。

茶園に着きキャサリンが茶園を案内しながらこのダートムーア茶園について様々なことを教えてくれました。

ここの茶園は2015年2月に最初の種を植えたところから始まったこと。

「どうしてお茶を栽培しようと思ったの?」

「私たちはずっと紅茶を飲んできたけど、ここ英国ではお茶の生産や栽培はされていなくて私たちにとって本当の意味でお茶との繋がりをもっていなかったの。お茶はただそこにあって、私たちはただそれを飲んでいただけ。」

「ここイングランド南西部のダートムーアで実験的に栽培できるものを探していた時に、私たちの国を含む世界中の多くの文化や歴史があり、国にとっても非常に重要な役割を担っているお茶が良いと、それが正しい選択だと思ったの。」

お茶の生産は自然との闘いだから本当に大変だけどね。
でも、すごく楽しいのよ。と笑顔で語るキャサリン。

今、ダートムーア茶園では約10000本の茶樹が植えられており、お茶の生産量は年間でわずか30㎏。
以前6週間雨が降らず日照りが続いたため茶樹が全滅したことがあったそうです。その時は本当に悲しかったとキャサリンは言います。
再び一から茶樹を植えようやく摘み取れるまで成長したときの喜びは計り知れなかったことでしょう。



「(お茶を生産するうえで)最も難しいと感じたことは何ですか?」

「私たちはお茶の栽培から加工、さらには淹れて提供するまで、学ぶことが本当に沢山あったわ。」
「でも、恐らくね、これほど巨大な『ティーバッグ文化』を持つ国で最も難しいのはルーズリーフティーの品質と価値を顧客に伝えることだと思う。」

この話を聞いた時に僕は凄く驚いたというか、目から鱗というか、「そうか!そうなのか!」と目をまん丸にしていたと思います。

こんなに日常的に紅茶を飲んでいる国であっても、99%ティーバッグ文化なこの国でリーフティーの魅力を伝えることは確かに困難だと思います。日本でも茶葉で入れることの大切さや魅力を伝えて広めていくことがすごく大変だけど、それはこの紅茶大国の英国でも同じなのかと衝撃を受けました。

ペットボトル液体茶よりティーバッグの方が断然良いと思うけれど、生産する側からすると茶葉で入れてそのお茶の魅力を楽しんでほしい。そう思うのは至って普通のことで、僕ら茶商は目先の利益のことばかりでなく、そういった生産者の思いを汲み取って消費者に伝えていかなければならないなと改めて強く思いました。

「ここの茶園の魅力は沢山あるのだけれど、一つは農薬を一切使用していないということ。そして100%純英国産のお茶だということ。私たちは今、緑茶、紅茶、白茶、黄茶とあらゆる茶の生産をしているのだけれど、それは何故だかわかる?」

「皆、好きなお茶が違うから?」

「その通りよ。私たちは全ての訪問者と顧客が異なる好みをもっているため、誰にとっても合うお茶が必要だと感じたの。私たちは一日の様々な時間や機会、また一人一人に合わせて様々なお茶を提案しているの。」

というわけで今からテイスティングをしましょう!とキャサリンと一緒にテイスティングルームに向かったのです。


つづく