【神戸阪急店店長】紅茶の『熟成』について考える

皆さんこんにちは。神戸阪急店店長の笹岡です。

先日、阪急うめだ本店で開催されているワールドティーフェスティバルへ行ってきました。
年に一度のお茶の祭典は今年も賑わっておりました。

いつもの顔なじみのお店と初めましてのお店。
顔なじみのお店に挨拶をした後、ぐるっと一周して気になるお店を物色。

こうしてみると本当に国産紅茶が増えたなぁと感じます。
面白いなぁ。と思いながら見て周っていたのですが、ちょっと気になることがあり今回のブログのタイトルになります。

というのも、ここ数年前から『熟成紅茶』って言葉を耳にしませんか?
今回の催事でも、多くのショップが「この紅茶は日が経って熟成しても美味しいですよ。」と勧めてきてくれました。

中には「今は春摘のフレッシュさが楽しめますが、半年ほど熟成させてもらうと深みのある味と香りに変わりますよ。」と説明してくださったのですが、この説明には納得がいかないというかそもそも紅茶に対して『熟成』という言葉を使われていることに僕は疑問を感じます。

皆さん、『熟成』ってどういうイメージをお持ちですか?

僕が持っている熟成のイメージは、タンニンや脂肪、タンパク質などの成分が分解、変化して風味がまろやかになったり、長い時間をかけることによって旨みが増すイメージなんですよね。

例えば、ワインやウイスキー、チーズ、生ハムなどが一般的ですよね。

では、これって紅茶に当てはまるんかな?って思いませんか?

基本的に紅茶は発酵後に乾燥して仕上がった時点で完成しているものなんですよね。
それ以降は劣化しないように保存するっていう感覚が本来の姿だと思うんですよ。

プーアル茶やみたいな中国茶の後発酵茶(黒茶)や圧縮白茶やプーアル(生茶)は熟成はするんですけど、一般的な紅茶には当てはまらないんですよね。中には例えばですけど、ダージリンやアッサムなどを一年寝かせておくと渋みが丸くなって美味しい。みたいなことを「熟成」と言っている人もいてます。

でも、これってあくまで「保存で多少変化することがある。」っていうレベルで、ワインとかみたいに「熟成=クオリティーアップ」って断定できるものではないと僕は思うんですよね。

で、この言葉を紅茶業界が乱用するのは非常にマズいんじゃないのかなって思うのです。

『熟成紅茶』という言葉がマーケティングとして先走っている感じがどうしてもするというか、 科学的にも業界的にもすごくズレているように僕は思うのです。また、これを生産者や茶商がお客様に伝えることにもう少し疑問を持ってほしいと思います。

確かに一年経つと、角が取れてそれはそれで美味しいなと思うものも中にはありますよ。
でも、それはあくまで「月日が経つと風味が丸くなることがある」くらいのフワッとしたニュアンスで伝えることであって「紅茶は熟成します!味が濃くなって甘みが増します!」みたいなのは、僕はどうしても首をかしげてしまいます。

もし、そのように作られているのだとしたら、それは恐らく紅茶ではなく圧縮白茶やプーアル茶の世界観に近いんじゃないのかな。

『熟成紅茶』って言葉はなんだか美味しそうな感じもするし、言葉もカッコいいし、耳障りが良い言葉だとは思うのだけど、熟成という本来の意味合いと異なっていないか言葉を大切にする日本人だからこそ今一度、紅茶と熟成について立ち止まって考えてほしいなと思います。